【Bizトレコラム】#5:④「この人なら任せられる」は、日々の小さなやり取りから生まれる
第1回では仕事の渡し方と受け取り方、第2回では相談・レビュー・修正、第3回では会議やチームでの協働を取り上げてきた。
ここまでのスキルは、どちらかといえば「仕事をどう進めるか」に関するものだった。
ところが、実際に仕事を任せる相手を考えるとき、それだけでは説明できない要素がある。
同じ程度の能力を持っている二人がいたとしても、
「この人には安心して任せられる」
と感じる人と、
「毎回こちらから確認しないと少し不安だ」
と感じる人がいる。
その差は、派手な成果よりも日常的なやり取りに表れやすい。
連絡したら反応がある。
急な依頼でも、優先順位を確認してから動く。
変更があれば相手にも知らせる。
口頭で決めたことを記録に残す。
休日や夜間には、相手の状況を考えて連絡する。
一つひとつを見ると、どれも高度な専門能力ではない。
しかし、こうした行動が積み重なると、周囲は「この人と仕事をすると、状況が分からなくならない」と感じるようになる。
第4回では、信頼を人柄や相性の問題としてではなく、日常の仕事の進め方として捉え、次の6組から考えていく。


1 「報告が簡潔」な部下と、「話が短く要点明快」な上司
コミュニケーションは、丁寧であればよいとは限らない。
仕事中の相手には、その人自身の仕事があるからである。
たとえば部下が進捗を報告するとき、
「先ほどA社の担当者と話をしたのですが、最初に営業の方から以前の経緯について説明がありまして、そのあと先方から……」
と時系列ですべて説明すると、上司は重要な部分が出てくるまで待たなければならない。
必要なのが意思決定であれば、
「A社との調整は予定通り進んでいます。ただし、納期について1点変更要望が出ました」
と始めた方が状況を把握しやすい。
そのあとで必要な背景を補足すればよい。
上司側にも同じことが求められる。
仕事を依頼するときに、思いついた情報をそのまま話すのではなく、
「依頼したいことは一つです」
「確認したい点は二つあります」
と論点を整理してから伝えれば、部下は何を持ち帰ればよいのか判断しやすくなる。
ここでいう簡潔さは、単純に話を短くすることではない。
必要な情報まで削ってしまえば、確認の往復が増え、かえって時間がかかる。
大切なのは、相手が次の行動を決めるために必要な情報を選び、それが分かる順番で渡すことである。
上司と部下の双方がこの考え方を持っていれば、「話した時間」ではなく「相手が理解するまでに要した時間」を短くできる。
2 「返信が早く中身がある」部下と、「忙しくても返す」上司
仕事では、すぐに答えを出せないことがある。
問題は、答えが出ないことより、その間に何の反応もないことである。
たとえば午前10時に確認を依頼したメールに、夕方になっても返信がない。
依頼した側には、
見ているのか。
見ていないのか。
今日中に回答があるのか。
別の人に相談した方がよいのか。
という判断ができない。
そのため、返信の価値は「回答そのもの」だけではない。
できる部下は、すぐに結論を返せない場合でも、
「確認しました。14時までに回答します」
「Aについては分かりました。Bだけ確認が必要なので、夕方まで待ってください」
といった形で、次に何が起こるのかを伝える。
上司も同じである。
部下から相談が来たとき、会議が続いていて十分に確認できないのであれば、
「今は詳しく見られないので、15時までに確認する」
と返すだけでもよい。
部下にとって重要なのは、「今すぐ完璧な回答をもらえること」より、自分の仕事を止めるべきか、それとも別の作業を進めるべきか判断できることである。
もちろん、単に「了解」と返せばよいわけではない。
返信の速さだけを意識すると、
「確認します」
「あとで見ます」
という返事ばかり増え、結局いつ回答されるのか分からなくなる。
反応の速さに加えて、「いつまでに」「次に何をするか」が分かれば、返信は仕事を前に進める情報になる。
3 「急ぎ依頼でも優先順位を確認する」部下と、「無茶振り前に確認する」上司
職場から急ぎの依頼をなくすことは、おそらくできない。
顧客から突然問い合わせが入ることもあれば、経営層から資料を求められることもある。予定していなかったトラブルへの対応が最優先になることもある。
問題になるのは、急ぎの仕事が入ったことではなく、それによって何が後ろにずれるのかを誰も確認しないまま進めることである。
上司から、
「これ、今日中にお願い」
と言われた部下が、すでに三つの仕事を抱えているとする。
そこで何も確認せず新しい仕事を始めれば、今まで優先していた案件が遅れる。
翌日になって上司から、
「昨日頼んでいたAはどうなった?」
と聞かれ、
「急ぎのBをやっていたので終わっていません」
という状況になる。
このやり取りは、部下がすべてを引き受けたことにも、上司が既存業務を確認せず仕事を追加したことにも問題がある。
部下側では、
「承知しました。今日予定しているAとBのうち、どちらを後ろにずらしましょうか」
と確認すればよい。
上司側も依頼する前に、
「今日予定している仕事の中で、動かせるものはある?」
と聞けば、仕事量を見ながら優先順位を組み替えられる。
「急ぎだからやる」で終わらせず、「急ぎを入れる代わりに何を動かすのか」まで考える。
そうすることで、突然の依頼が発生しても、別の仕事が気づかないうちに遅れる状態を防ぎやすくなる。
4 「優先順位を共有してズレを防ぐ」部下と、「優先変更を共有する」上司
優先順位は、一度決めたら固定されるものではない。
朝にはA案件が最優先だったのに、昼に重要顧客から連絡が入り、B案件が最優先になることもある。
問題は、その変更が関係者全員に共有されないことである。
上司の頭の中では、
「状況が変わったから当然Bを先にやるだろう」
と思っている。
ところが部下は、朝の指示通りAを進めている。
夕方になって、
「Bはまだやっていないの?」
という話になる。
このようなズレは、仕事に対する意識の高さよりも、情報共有の問題として考えた方が解決しやすい。
上司が優先順位を変更したのであれば、
「午前中はAを最優先と言ったが、状況が変わったので、いったん止めてBを先に進めてほしい」
と変更そのものを伝える。
部下側でも、自分が複数の仕事を抱えている場合には、
「今日はAを最優先、Bを次、Cは明日に回す予定です」
と共有しておけば、上司が違和感を持った時点で修正できる。
優先順位を自分だけの頭の中で管理していると、お互いが合理的に動いているにもかかわらず、結果として食い違うことがある。
仕事の状況が頻繁に変わる職場ほど、「今の優先順位」を言葉にして共有することに意味がある。
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- 5 「口頭指示を記録に残す」部下と、「口頭指示を残す」上司
- 6 「相手の都合を見て相談する」部下と、「夜休日の連絡を配慮する」上司
- 信頼は、「ちゃんとやります」ではつくれない
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