【Bizトレコラム】#5:②できる人は「相談・レビュー・修正」で仕事を止めない
第1回では、結論、目的、期限、期待値、優先順位など、仕事を始める段階で認識を揃える方法を取り上げた。
しかし、どれだけ丁寧に仕事を始めても、最初の想定通りに最後まで進むとは限らない。
調べてみたら前提が違っていた。
途中で判断に迷った。
上司が期待していたものと少し方向がずれていた。
思わぬミスが見つかった。
実務では、こうしたことが日常的に起きる。
ここで仕事ぶりに差が出る。
問題が起こらないようにすることだけではなく、問題が起きたときに、どれだけ早く相談し、必要なレビューを受け、軌道修正できるか。その能力まで含めて仕事力を考える必要があるからである。
ところが、「相談」という行為は意外に難しい。
部下からすると、
「こんなことを聞いたら、分かっていないと思われないだろうか」
「忙しそうだから、もう少し自分で考えよう」
「ある程度形にしてから見せた方がいいだろう」
と考えているうちに、相談が遅れる。
一方、上司は、
「困っているなら早く相談してくれればいいのに」
と考える。
ここには典型的なすれ違いがある。
相談しない部下だけが悪いわけでも、相談させない上司だけが悪いわけでもない。部下には「相談の質を高める力」が必要であり、上司には「相談を機能させる力」が必要なのである。
第2回では、その関係を次の6組から考えていく。


1 「相談の論点が明確」な部下と、「相談しやすい」上司
「ちょっと相談があるのですが」
こう切り出されて、話を聞いてみたものの、何について判断を求められているのか最後までよく分からない。
上司をしていれば、一度は経験したことがあるのではないだろうか。
たとえば部下から、こんな相談を受けたとする。
「A社の件なのですが、営業からこういう話が来ていて、先方とも話をしたのですが、開発からは別の意見も出ていて……」
情報はたくさんある。しかし上司には、自分が何を答えればよいのかが分からない。
相談では、情報量よりも先に「何について相談したいのか」を明確にした方がよい。
たとえば、
「A社から追加要望が出ています。納期を1週間延ばして対応するか、今回は断るか、この2案のどちらにするか相談したいです」
と伝えれば、上司は聞くべきポイントをすぐに理解できる。
相談する側が整理しておきたいのは、少なくとも次の3点である。
何が起きているのか
自分はどう考えているのか
相手に何を判断してほしいのか
ただし、部下に相談の整理力だけを求めても十分ではない。
上司が日頃から相談を歓迎していなければ、部下は問題が大きくなるまで持ってこなくなるからである。
相談を受けるたびに、
「それくらい自分で考えて」
「今忙しいから後にして」
と返していれば、部下は次第に「相談しない方が安全だ」と学習する。
できる上司は、何でも答えを与えるわけではない。むしろ、相談されたときに、
「あなたはどう考えている?」
「どこまで分かっていて、どこから迷っている?」
と問い返すことで、部下自身に考えさせる。
相談しやすさと甘やかすことは、同じではないのである。
2 「質問が具体的」な部下と、「質問を歓迎する」上司
相談と似ているが、「質問」にも技術がある。
仕事を始めたばかりの人ほど、
「ここが分かりません」
という聞き方をしがちである。
しかし、「分からない」と言われただけでは、相手も何を説明すればよいのか分からない。
たとえば、
「この資料の作り方が分かりません」
では範囲が広すぎる。
一方、
「過去資料を3本確認したのですが、売上を受注ベースで集計するのか、計上ベースで集計するのか判断できません。今回はどちらでしょうか」
まで整理されていれば、上司は短時間で答えられる。
できる部下は、質問する前に一度自分で考える。
何が分かっているのか。
何が分からないのか。
何を調べたのか。
どこで判断できなくなったのか。
そこまで整理したうえで質問するため、相手に余計な解読作業をさせない。
ただし、ここでも上司側の姿勢が影響する。
部下が質問するたびに、
「前にも説明したよね」
「そんなことも分からないの?」
という反応をすれば、質問は出てこなくなる。
そして、質問されなくなったことを「部下が成長した」と勘違いすると危険である。単に聞けなくなっているだけかもしれない。
質問を歓迎する上司とは、何度でも同じことを教える上司ではない。
「どこまで調べた?」
「どこで詰まった?」
と確認しながら、考えたうえでの質問にはきちんと応じる。
この関係ができると、分からないことを放置せず、かといって何でも上司に聞くわけでもない、適度な自走が生まれてくる。
3 「1on1を活かす」部下と、「1on1を活かす」上司
1on1を実施する会社は増えたが、実際には「近況報告の時間」になっているケースも少なくない。
上司が、
「最近どう?」
と聞き、
部下が、
「特に問題ありません」
と答える。
そのまま案件の進捗確認をして30分が終わる。
これでは、通常の業務ミーティングとあまり変わらない。
1on1の価値は、日常業務の中では扱いにくいテーマについて対話できるところにある。
たとえば部下側なら、
「最近、案件が重なったときに優先順位の判断で迷うことが多い」
「顧客との交渉を任されたいが、何が足りないのか知りたい」
「自分では資料作成が課題だと思っているが、どう見えているか聞きたい」
といったテーマを持ち込める。
できる部下は、1on1を「上司が何か話してくれる時間」とは考えない。自分の仕事や成長について相談する機会として使う。
上司側も同様である。
1on1で上司ばかりが話してしまえば、部下から情報は出てこない。
「最近困っていることは?」
だけでなく、
「今の仕事で、時間を取られている割に成果につながっていないものはある?」
「今より一段難しい仕事を任せるとしたら、何に挑戦したい?」
など、少し具体的な問いを投げることで、普段の会話では表に出ない問題を拾いやすくなる。
1on1は、実施回数を増やせば機能するわけではない。
上司と部下の双方が「この時間で何を話すのか」を考えて初めて、日々の仕事を補完する場になる。
4 「前回の指摘を反映する」部下と、「フィードバックが具体的」な上司
レビューを何度しても、毎回同じところを指摘される。
上司にとっては、かなり疲れる状態である。
「前にも言ったよね」
と言いたくなる。
一方、部下からすると、フィードバックの内容が曖昧で、何を変えればよいのか理解できていない場合もある。
たとえば上司から、
「もっと分かりやすくして」
「もう少し考えて」
「資料が弱い」
と言われても、次回何を修正すればよいのかは判然としない。
そこで、できる上司は改善可能なレベルまで具体化する。
「このページは情報量が多いことより、結論が書かれていないことが問題だ。次回から各ページの上部に、そのページで伝えたいメッセージを1文で置いてほしい」
ここまで言われれば、部下は次回の行動を変えられる。
そして部下側に求められるのは、一度受けた指摘を、その成果物だけで終わらせないことである。
ある資料で、
「数字だけでなく前年比も入れた方が判断しやすい」
と指摘されたなら、次の資料でも同じ観点を確認する。
フィードバックを「今回の修正指示」として受け取るか、「今後も使える判断基準」として受け取るかで、成長速度は大きく変わる。
レビューのたびに上司が同じことを指摘しているなら、部下にフィードバックが蓄積されていない可能性がある。
反対に、部下が毎回違うところで迷っているなら、上司のフィードバックが十分に具体化されていない可能性もある。
レビューを成長につなげるには、伝える側と受け取る側の両方に技術が必要なのである。
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- 5 「ミスをすぐ共有する」部下と、「困った時に助ける」上司
- 6 「失敗時も原因と対策を出す」部下と、「失敗時も責めずに整理する」上司
- 「相談すること」を、自走の反対だと考えない
- 第2回のまとめ
- シリーズ連載
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