【Bizトレコラム】#6:「地頭がいい人」は、何をしているのか(限定無料)

地頭を鍛える4の習慣
吉澤 準特 2026.10.08
誰でも

「地頭がいい人になりたい」と言われることがあります。

では、地頭がいいとは、いったい何でしょうか。

難しい問題にすぐ答えられることなのか。
会議で誰よりも早く論点を見抜くことなのか。
あるいは、知らないテーマについてもそれなりの答えを返せることなのか。

たしかに、そういう人を見ると「頭がいい」と感じます。

ただ、仕事をしていると、少し違うタイプの人の方が強い場面があります。

最初の答えは外しても、途中で「あ、違うな」と気づいて修正できる人。
思い込みで突っ走らず、「本当にそうなのか」と立ち止まれる人。
分からないことを分からないままにせず、必要な情報を取りにいける人。

私は、仕事における地頭の良さは、こちらに近いのではないかと思っています。

要するに、

正しく見て、考えて、試して、必要なら考え直す。

地頭を鍛えるというのは、このサイクルの精度を上げていくことです。

***

まず、考える前に「正しく見る」

たとえば上司から、「この企画、もう一度考え直して」と言われたとします。

その瞬間、

「否定された」
「評価されていないのかもしれない」

と感じることがあります。

でも、実際に起きた事実は「企画案について修正を求められた」だけかもしれません。

そこに、

「否定された」という解釈、
「悔しい」という感情、
「自分は評価されていない」という推測

が加わっています。

私たちは普段、この4つをかなり無意識に混ぜています。

ここで一度、

「事実として確認できるのは、どこまでだろう?」

と切り分けてみる。

これだけでも、その後の考え方は変わります。

仕事で判断を誤る原因は、必ずしも論理力が足りないからではありません。
そもそもの入力情報が歪んでいる場合も多いのです。

これは「分からないこと」に対しても同じです。

分からないことを一人で30分考え続けるより、

「ここまでは分かる。でも、この部分とのつながりが分からない」

まで整理して聞いた方が早い。

質問することは、思考を放棄することではありません。
むしろ、自分が何を理解できていないのかを特定する作業です。

情報の取り方にも同じことが言えます。

SNSで誰かが紹介した調査結果を見る。
ニュース記事で企業の発表を知る。
誰かが要約した資料を読む。

便利ですが、その時点ですでに「誰かの解釈」が入っています。

だから重要な判断ほど、できる範囲で一次情報まで戻ってみる。

「何を考えるか」の前に、

「私は、何を材料に考えているのか」

を点検する。

地味ですが、ここが思考の土台になります。

***

最初に出た答えを、いったん疑ってみる

情報を正しく捉えられたら、次は考える段階です。

ここでやりがちなのが、最初に思いついた答えをそのまま採用してしまうことです。

たとえば、

「売上が落ちています」

と言われた瞬間、

「広告を増やしましょう」

と答える。

間違っているとは限りません。
でも、まだ早い。

売上が落ちた理由は、

認知が減ったのかもしれない。
購入率が下がったのかもしれない。
客単価が下がったのかもしれない。
リピート率が落ちたのかもしれない。

原因が違えば、当然、打ち手も変わります。

そこで使えるのが、

「他に説明できる可能性はないか?」

という問いです。

最初の仮説を捨てる必要はありません。
ただ、横にもう2つくらい並べてみる。

それだけで、かなり思考の偏りを減らせます。

さらに視点を変えてみます。

自分から見ると合理的な施策でも、顧客には面倒かもしれない。
現場には便利でも、管理側には負担が増えるかもしれない。
今月は数字が伸びても、半年後には別の問題が起きるかもしれない。

「自分ならどう思うか」だけでなく、

「顧客なら?」
「経営者なら?」
「1年後なら?」

と位置をずらしてみる。

これはラテラルシンキングでいう「むしろ」に近い使い方です。

時間軸を変えるのも有効です。

値下げすれば、短期的には売上が増えるかもしれません。
でも、それを続けると「安くなったときだけ買う」顧客を増やす可能性もあります。

だから、

「今どうなるか」と「その結果、その後どうなるか」

を分けて考える。

さらに、原因を考えるときも、「なぜ?」をひたすら深掘りすればよいわけではありません。

たとえば、

「報告が遅れた」
「なぜ?」
「担当者が忘れていた」

で止めてしまうと、対策は「次から気をつけよう」になりがちです。

もう一歩進めて、

「なぜ忘れても、そのままになったのか?」

と考える。

すると、

「期限前に思い出させる仕組みがなかった」

という構造が見えてきます。

ここまで来れば、

リマインドを設定する。
タスク管理に登録する。
期限前に自動通知する。

と、具体的な改善に落とせます。

原因分析は、深く掘ること自体が目的ではありません。

変えられるところまで考える。

これが仕事では大事です。

もう一つ、意外に効くのが、自分の興味とは少し離れたものを見ることです。

同じ業界の記事、同じ職種の人、同じ専門書だけを見ていると、どうしても発想が似てきます。

たまに歴史や心理学、生物、芸術、他業界の事例を見て、

「この世界では、似た問題をどう解いているんだろう?」

と考えてみる。

一見、仕事に関係なさそうな知識が、あとになって突然つながることがあります。

発想力は、何もないところから生まれるというより、離れた知識同士をつなぐ力に近いのだと思います。

***

考えたら、現実にぶつけてみる

ここまで考えても、まだ「頭の中の話」です。

地頭を鍛えるうえで大事なのは、ここからです。

考えたことを、小さく現実にぶつけてみる。

「問い合わせが少ないのは、入力項目が多すぎるからではないか」

と思ったなら、いきなりサイト全体を作り直すのではなく、入力項目だけ減らしてみる。

そして結果を見る。

違えば、仮説を直す。

仮説 → 試す → 結果を見る → 考え直す。

これを速く回せる人は強いです。

仕事では、最初から正解を当てられるケースばかりではありません。

むしろ、

外したときに、どれだけ早く修正できるか

の方が大事なこともあります。

そのためには、自分の意見を変えることを「負け」だと思わないことです。

新しい情報が出てきたのに、

「前にこう言ったから」

という理由だけで意見を変えない方が危険です。

「今の情報ならAだと思う。ただし、Bが確認されたら考えを変える」

くらいの持ち方がちょうどよい。

最近なら、AIもこの練習に使えます。

ただし、

「答えを教えて」

だけでは少しもったいない。

むしろ、

「この仮説の弱点は?」
「反対意見を出して」
「見落としている前提は?」
「この結論が間違っているとしたら?」
「別の解釈を5つ考えて」

と投げてみる。

AIに答えを出してもらうのではなく、自分の考えを壊してもらうわけです。

これはかなり有効な壁打ちになります。

そして、ときどき自分自身にも同じことをします。

「自分はいま、何を当然だと思っているのか?」

人間は、最初に聞いた数字に引っ張られたり、自分に都合のよい情報だけ集めたりします。

完全には避けられません。

だからこそ、時々「そもそも」と自分の前提を確認する。

これはクリティカルシンキングそのものです。

***

最後は、自分の判断基準として残す

ここまでやっても、振り返らなければ経験はその場限りになります。

仕事で何かうまくいったとき、

「成功したから、判断は正しかった」

と思いたくなります。

でも、運がよかっただけかもしれません。

逆に失敗しても、判断プロセス自体は妥当だった可能性があります。

だから結果だけでなく、

「何を予想していたか」
「なぜそう考えたか」
「実際には何が起きたか」
「何を見落としていたか」

を振り返ります。

ここでかなり効くのが、誰かに説明してみることです。

自分では分かったつもりでも、人に話そうとすると、

「ここ、うまく説明できないな」

という場所が出てきます。

それは、まだ頭の中で構造化できていない場所です。

説明できるところまで整理すると、経験が少しずつ「次にも使える知恵」に変わります。

さらに、

「自分は何を基準に判断したのか」

まで残しておくと強いです。

たとえば、新しい施策を考えるときに、

効果だけを見るのか。
コストも見るのか。
リスクはどこまで許容するのか。
すぐ戻せる施策なのか。
実行できる人員はいるのか。

こうした判断軸を持っておけば、別の問題にも応用できます。

地頭がいい人というのは、あらゆる問題の答えを知っている人ではないのでしょう。

知らない問題に出会ったときに、

事実を見て、
複数の可能性を考えて、
試して、
違えば修正して、
そこから次に使える判断基準を残す。

この流れを自然に回せる人です。

トリプルシンキングで言えば、

「そもそも、本当にそうなのか」とクリティカルに問い、

「むしろ、別の見方はないか」とラテラルに広げ、

「それなら、どう整理して動くか」とロジカルにつなげていく。

地頭とは、この3つの思考をうまく往復する力とも言えそうです。

もし今週、仕事の中で一つだけ試すなら、何か判断するときに、

「ほかに説明できる可能性はないか?」

と一度だけ自分に聞いてみてください。

最初に浮かんだ答えの横に、もう一つ別の答えを置いてみる。

地頭を鍛えるトレーニングは、そのくらい小さなところから始められます。

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